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神経が悪くなっている」と言われ、大阪市立小児保健センターへも行きましたが、阪大と同じ診断。「子供の知恵が遅れるので、ろう学校へ行きなさい」と、言われました。
村の子供は、耳が聞こえないと意地悪をし、浜辺で遊んでいる寧のおもちゃの自動車を、砂浜の中に隠し、頭から砂をかけられ泣かされていました。他人に言えない悲しみでした。「村の子供に負けない子に育てたい」と思い、ろう学校に入学させる決心をしました。
豊岡ろう学校は家から遠く、寄宿舎にお世話になりました。四月八日、幼稚部に入るときは大変に悲しい思いをしました。家を出て汽車に乗り、親子が一時間ほど泣いて居るので車掌さんが、「どうかしましたか」と尋ねられ、その親切に感謝しました。
「人に言えない悲しみ。寧と一緒に死のうか」と思ったが、ほかの子供を残して死ぬことができませんでした。
寮母さんには大変に苦労かけました。私は寧のことを思い食事ものどを通りません。寄宿舎に入ったが体が弱いため、ハシカにかかり、高熱を出して家に帰りました。寧は高熱があるのに兄たちと、嬉しくて犬ころのように遊ぶ姿を見て泣けました。ハシカの後、黄疽が出て鳥取日赤病院に入院しました、三ヵ月ほど学校を休みましたが、学校に戻り寮に入りました。寮母さんにはお世話になるぱかり。寮母さんは事の育ての親です。感謝でいっぱいです。
毎年、運動会がくるたびに、幼いころを思い出します。私の顔を見ると泣き出し午後は寧に隠れるようにして校門を出て帰り、胸の奥まで悲しい運動会でした。でも一年、一年と成長して六年生からは、一人で帰省するようになりました。

 

 

 

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